遺伝カウンセリングとは,そして遺伝カウンセラーとは

カウンセラーイラスト

遺伝カウンセリングとは、遺伝子や遺伝のメカニズムが関与する疾患や体質について、さまざまな問題を抱える方やそのご家族のお話を伺いながら、医療情報をわかりやすく説明したり、心理社会的なサポートを行って、一般の方たちの理解と納得を支える医療サービスです。
欧米ではすでに確立した専門職種となっており、1970年代に遺伝カウンセラー養成が開始された米国では、現在29大学の大学院修士課程で養成がなされ、主に白人女性を中心とした2,000人余の遺伝カウンセラーが広く医療の場で活躍しています。

遺伝子の変化や染色体の変化は、健康な人にも起こる可能性があり、だれでもが常染色体劣性遺伝病の遺伝子変化を10個程度は持つと言われています。また先天性心疾患や口唇口蓋裂、神経・筋疾患、内分泌異常など、新生児に認められる形態的、機能的異常(先天異常)は、軽度のものを含めれば新生児の5~6%を占め、1歳までの乳児の死因のおよそ1/3を占めています。

遺伝カウンセラーは疾患の解説をはじめ、遺伝子検査で明らかになることや、療育における社会福祉資源など、入手可能なあらゆる情報を提供して当事者を支えます。
先進的な研究の進展により、遺伝性疾患に関する知見が次々に得られていますが、慣れない専門用語や専門的情報を理解することは非常に難しく、また、家族関係や個人の資質によっても受けとめ方や対処の仕方も大きく異なります。
遺伝カウンセラーはクライエントの側に立って、上下関係の生じがちな主治医とは異なった視点と倫理感からカウンセリングを提供します。クライエントにとっても、個人的な事情を相談できる稀有な人材です。

さらに、これまで体質といわれていたものにも、遺伝子の研究から理解が始まっています。私たちの持つ遺伝情報を精査・タイプ分けして、個人ごとの病態の差や薬剤の有効性、副作用の個人差を決めている遺伝子多型を明確にする試みが世界的に進められています。まれな遺伝性疾患のみならず、多因子遺伝といわれる糖尿病や脳血管障害などについても、患者個人に最適な医療を提供する「オーダーメイド医療」が開始され、がんではすでに個人の遺伝子型に合う分子標的薬治療が選ばれています。

自分の受ける治療をよく理解して薬を選ぶことは、その後の社会生活や医療費に関しても非常に大切なことです。多くの人々にとって、治療法などの科学的エビデンスの有無を見抜くことは難しいことですが、分子遺伝学に精通する遺伝カウンセラーは、ここでも社会のために役立つ人材であると言えるでしょう。

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認定遺伝カウンセラーとは

家族1

認定遺伝カウンセラーは大学院においてオーソライズされた専門教育*1を受け、医療や心理の専門的知識とカウンセリング技術をもって、クライエントにふさわしい支援を探り、患者の自律的な意思決定プロセスを支える人材です。日本においては、現在14大学大学院*2に遺伝カウンセラー養成のための専門課程が置かれ、日本人類遺伝学会日本遺伝カウンセリング学会が共同で資格認定を実施しています。

「認定遺伝カウンセラー」は2017年12月現在、226名が資格認定を受けています。

*1 表1に認定遺伝カウンセラーのカリキュラムを示しました。認定遺伝カウンセラーは、遺伝医学、先端科学、臨床心理、倫理、カウンセリング技術、情報、社会学にわたる、他の領域では学ぶことのできない極めて高度な専門教育を受けています。さらに医療現場での実習を経て、その後、認定試験(面接及び筆記)に合格して誕生します。

*2 表2に現在、認定遺伝カウンセラー養成を行っている専門課程を挙げました。

表1

認定遺伝カウンセラー養成のための標準カリキュラム
      (日本遺伝カウンセリング学会誌、24(2)63-78,2004)
科 目 到達目標該当箇所 単位 時間 方法
基礎人類遺伝学(1) 1.1)遺伝学史
 2)細胞遺伝学
 3)分子遺伝学
 4)メンデル遺伝学
 5)非メンデル遺伝
 6)集団遺伝学と遺伝疫学,家系分析
 7)遺伝生化学・遺伝薬理学
 8)生殖・発生遺伝学
 9)体細胞遺伝学
 10)腫瘍遺伝学
 11)免疫遺伝学
4 60 講義
基礎人類遺伝学(2) 染色体・DNA検出と正常・異常の識別,
家系図作製・遺伝確率
2 60 演習
臨床遺伝学 1.12)遺伝医学・遺伝医療 2 45 講義(1)演習(1)
遺伝サービス情報学 遺伝関連情報・情報検索方法 1 30 演習
遺伝医療と社会 4.遺伝医療と社会 1 15 講義
遺伝医療と倫理 3.遺伝医療と倫理 2 45 講義(1)演習(1)
医療カウンセリング概論 2.保健医療の場に来る健康問題を持つ人々の心理的特性とその対応の基本 1 15 講義
遺伝カウンセリング 2.事例によるカウンセリングの実際,含む文献購読 3 75 講義(1)演習(2)
遺伝カウンセリング実習 遺伝カウンセリングを行っている施設で遺伝医,遺伝カウンセラーの指導のもとで実践的に学ぶ 6 180 実習
    22 540  
遺伝カウンセリング研究   8   演習
    30    

表2

認定遺伝カウンセラー養成専門課程(50音順)

岩手医科大学大学院 医学研究科 医科学専攻 応用医科学群 遺伝カウンセリング学

お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科 ライフサイエンス専攻 遺伝カウンセリングコース・領域

川崎医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科 医療福祉学専攻修士課程 遺伝カウンセリングコース

北里大学大学院 医療系研究科 医科学専攻修士課程 遺伝カウンセリング養成プログラム

京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻 専門職学位課程遺伝カウンセラーコース

近畿大学大学院 総合理工学研究科 理学専攻 遺伝カウンセラー養成課程

札幌医科大学大学院医学研究科医科学専攻修士課程遺伝カウンセリングコース

信州大学大学院 医学系研究科 医科学修士課程(医科学専攻) 遺伝カウンセリングコース

千葉大学大学院 医学薬学府 修士課程医科学専攻社会医学コース

東京女子医科大学大学院 先端生命医科学専攻 遺伝子医学分野 遺伝カウンセリング専門課程

東北大学大学院医学系研究科医科学専攻修士課程遺伝カウンセリングコース

長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 保健学専攻修士課程 看護学講座

新潟大学大学院医歯学総合研究科医科学専攻修士課程・遺伝カウンセリングプログラム

藤田保健衛生大学大学院保健学研究科保健学専攻修士課程臨床検査学領域遺伝カウンセリング分野

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認定遺伝カウンセラー制度とは

カウンセラーイラスト

認定遺伝カウンセラー制度委員会HPより転載)

★日本での遺伝カウンセリングの始まり

わが国でアメリカの人類遺伝学会が提唱した遺伝カウンセリング(かつては遺伝相談と呼ばれました)の普及活動が始まったのは1970年代からでした。 当時は、カウンセラーは医師が中心でした。
しかし、1980年代からゲノム医学が発達し、遺伝子診断が実用化されると、遺伝性疾患の概念が大きく変わりました。従来の先天性の疾患やメンデル遺伝をする疾患(形質)だけでなくガンや生活習慣病までが遺伝カウンセリングの対象になったのです。
遺伝カウンセラーには単に遺伝医学情報の提供だけではなく、クライエントの立場から問題解決を援助したり、心理的な対応技術が必要とされます。また、遺伝カウンセリングが扱う内容には高度に倫理的な内容が含まれますので、医師とは独立した専門職の遺伝カウンセラーが必要になりました。

★認定遺伝カウンセラー制度の発足

このような背景から、わが国の遺伝医療システムの構築をめざした研究班(厚生労働科研,主任研究者:古山順一)が結成され、7年間にわたり遺伝医療をささえるマンパワーの養成について研究がなされました。
研究成果の一つとして、2002年から臨床遺伝専門医の認定制度が発足しました。
しかし、遺伝カウンセラーについてはまったく新しい専門職であるため、養成カリキュラムの作成から着手し、このカリキュラムを採用した養成専門課程が、信州大学大学院と北里大学大学院(2003年)、お茶の水女子大学大学院(2004年)に開設されました。

★現在の認定遺伝カウンセラー制度

現在、川崎医療福祉大学大学院、京都大学大学院、近畿大学大学院、千葉大学大学院、東京女子医科大学大学院、長崎大学大学院、東北大学大学院、藤田保健衛生大学大学院、札幌医科大学大学院、岩手医科大学大学院、新潟大学大学院が加わり、全14大学院に認定遺伝カウンセラー養成専門課程が開設されています。
これらの養成専門課程は、日本遺伝カウンセリング学会と日本人類遺伝学会が協力して制度化した「認定遺伝カウンセラー制度」の専門教育機関として認定され、修了者は認定試験に合格すると認定遺伝カウンセラーを呼称することができます。

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