2011年2月7日講演会詳細

「遺伝カウンセラーへの政策的観点からの課題」

菱山 豊 氏(独立行政法人科学技術振興機構、上智大学生命倫理研究所)

菱山 豊氏 略歴

1985年 東京大学医学部保健学科卒業。科学技術庁に入庁
2001年1月 文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室長
2003年3月 政策研究大学院大学客員教授兼務。6月より政策研究大学院大学教授
2007年1月から2009年6月まで ライフサイエンス課長
2009年7月から2010年7月まで 文教施設企画部計画課長
2010年8月 独立行政法人 科学技術振興機構(JST)経営企画部長

hishikawa

プロフィール

文部科学省研究振興局ライフサイエンス課において、ヒトES 細胞、ヒトゲノム解析、ヒトクローン技術等に関する倫理指針や、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律案の作成に携わる。iPS細胞についての研究ロードマップの策定をはじめライフサイエンス分野の新しい科学技術の発展を図りつつ、医学・先端医療における生命倫理の課題など、科学技術の急激な発展が日本社会にもたらす様々な軋轢に鑑みた政策立案に従事してきた。

主な著書

「生命倫理ハンドブック―生命科学の倫理的、法的、社会的問題」
                 (築地書館、2003年)
「ライフサイエンス政策の現在-科学と社会をつなぐ」(勁草書房、2010年)など

遺伝医療の要-遺伝カウンセリングと認定遺伝カウンセラー

   黒木 良和 氏(川崎医療福祉大学大学院遺伝カウンセリングコース)

黒木氏写真

   

 遺伝医療では患者中心の医療が指向され、患者の話に傾聴し、分かりやすい説明と自律的意思決定を支援することが求められる。
 遺伝医療の対象疾患は多岐にわたり、病因となる遺伝情報は生涯変化せず、血縁者で一部共有される等一般医療と異なる特性をもっている。さらに慢性の経過をとるものが多く、治療法や予防法が必ずしも確立されていない。そのため疾患を克服するには専門医療のみでは困難で、福祉、教育、介護等の対応が必要で、その実践には倫理的・法的・社会的配慮や患者・家族の心理社会的支援が必須である。
 遺伝医療の医学的専門性に加えて、あくまでも患者に寄り添い、彼らの意思決定を支援する遺伝カウンセリングは遺伝医療の要であり、認定遺伝カウンセラーは臨床遺伝専門医と協力してその任に当たる専門職である。遺伝医療の現場でどのように活躍し、患者満足度の向上に貢献しているか提示したい。

黒木良和氏 略歴

昭和38年  九州大学医学部卒業
昭和39年  九州大学医学部小児科助手
昭和45年  国立福岡中央病院小児科医官
昭和48年  神奈川県立こども医療センター小児科医長
平成 3年  同上重症心身障害児施設長
平成11年  同上副所長兼病院長
平成13年  同上所長
平成15年  川崎医療福祉大学教授 現在に至る
専門領域   小児科学、臨床遺伝学、遺伝疫学

主な業績
 1. 新しい疾患の確立(Kabuki make-up 症候群) J Pediatr,1981
 2. わが国最初の先天異常モニタリング事業を開始(1981) Cong Anom,1982
                      現在に至る
 3. 妊娠中の喫煙が胎児の奇形を誘発する事実を確認(世界初) Cong Anom,1985
 4. Rubinstein-Taybi 症候群の遺伝子を発見 Nature,1995
 5. 環境ホルモンと尿道下裂の関連性を示唆 2002

主な著書
 黒木良和・松井一郎:図説染色体異常、朝倉書店、1981
 黒木良和他著:小児科MOOK ダウン症候群、金原出版、1985
 黒木良和他著:先天奇形症候群アトラス、南江堂、1993
 黒木良和他著:人類遺伝学-基礎と応用-、金原出版、1995
 黒木良和編著:先天異常症候群辞典(上下)、日本臨床社、2001
 黒木良和共著:開業医の外来小児科、南山堂、2002
 黒木良和共著:標準公衆衛生・社会医学、医学書院、2006

主な公的審査会等
 厚生省、文部省、神奈川県、横浜市の複数の委員会・審査会に委員として参加
 教育:横浜市大、聖マリアンナ医大、東海大学、北里大学、川崎医科大学、
    川崎医療福祉大学で学生教育・卒後教育に従事

ボランティア活動
 障害児親の会を支援:ダウン症、染色体異常親の会など
 難病のこども支援全国ネットワーク(NPO)に運営委員として参加
  遺伝・先天異常特別電話相談、遺伝カウンセリングを担当
 みどり教育財団(五嶋みどり)顧問(障害児と音楽担当)